先月のメルマガでもお知らせました、音楽之友社によるソプラノ歌手・中嶋彰子さんをラックスマン試聴室にお迎えした取材内容が「レコード芸術」誌7月号に掲載されております。今回はその記事を2回に分けて特別掲載いたします。

「ソプラノ歌手・中嶋彰子さんを迎えて
純A級プリ・メインアンプL-590A/
真空管セパレートアンプCL-88&MQ-88を聴き比べる」
■文:今泉晃一
中嶋彰子さんは15歳でオーストラリアに渡り、その地でソプラノ歌手としてデビュー。その後国際的に活躍され、現在はウィーン・フォルクスオーパーの専属歌手も務める。ピアノ伴奏にクラリネットを加えた1枚目のソロ・アルバム「ラ・パストレッラ~歌曲とアリア集」に続き、今度はオーケストラをバックに様々なアリアを歌う「フィーメイル・ポートレイツ~女性の肖像」をリリース。日本でのソロ・リサイタルの合間の一日、ピアノ伴奏を務める(そして『フィーメイル・ポートレイツ』でもタクトを取る指揮者である)ニルス・ムースさんとともにラックスマンの試聴室にお迎えした。
表現したい音楽性をサポートする
ためのテクノロジー
今回のテーマは、ラックスマン80周年記念モデルとして誕生した純A級プリ・メインアンプL-590Aと、長年培ってきた真空管というデバイスとノウハウを投じて誕生した、斬新なデザインの管球式セパレートアンプCL-88/MQ-88の聴き比べ。まずは「フィーメイル・ポートレイツ」の中から中嶋さんのリクエストで、マスカーニ《友人フリッツ》の二重唱〈スゼル、おはよう……すべてが沈黙しているけれど〉を2組のアンプで聴く。
オーディオにも興味があるとおっしゃる中島さんは、「この曲に関しては、真空管アンプであるCL-88とMQ-88の方が合っていると感じました。余計なもやもやがなくなり、聴きたいものがよりクリアに聴こえるようになっています」と明快な感想。一方、アルバムのエディティングにも深く関わったというムースさんは「どちらのアンプも、表現したい音楽性をサポートするためにテクノロジーが使われているように感じます」と、出て来た音の裏側にある部分を見抜いた。

ご自分の新作「Female Portraits」を真空管システムでたっぷりと鑑賞された中嶋彰子さん
狂乱の女性をどう表現するか
2つのアンプの2つのアプローチ
中嶋さんのアルバム「フィーメイル・ポートレイツ~女性の肖像」はそのタイトル通り、オペラに登場する様々な女性の姿――美しくもあり、醜くもあり、そして恐ろしくもある――を描き分け、歌い分けたオペラ・アリア集だ。「ただ美しいだけではなく、追い詰められた魂のきわどい部分を表現したいと思いました。その一方で今聴いた《友人フリッツ》のスゼルのような、まだ恋に落ちているかどうかさえわからないような純真な女性も表現しています」と中嶋さん。
「売れるためのCDを作るのではなくて、エゴイスティックに作ったアルバムです。特にニコライの《流刑者の帰国》のアリアは世界初録音ですが、ニルスが発掘したものです。またヴェルディの《椿姫》は有名なオペラですが、皆が知っているようなアリアではなく、病に伏したヴィオレッタの歌う第3幕の手紙のシーンをわざと選んでいます」。
そんなアルバムの中から、今度は《友人フリッツ》のアリアとは正反対に、二人の男性と自分の子供の狭間で苦悩する女性の狂乱を歌ったベルリーニの《海賊》より〈その汚れない微笑と〉を聴く。まずは先ほど印象の良かったCL-88/MQ-88から。
「このアリアは決して美しくはありません。苦悩する女性の魂の叫びで、冷静にCDを聴いている相手を感動させなければならない。これはすごいチャレンジでした。それがどう表現されているのか興味がありましたが、自分のやろうとしていた音楽がストレートに表現されていたと思います」と中嶋さん。ムースさんも同様の感想を持ったようで、「表現そのものを突き詰めていくことによって音楽の本当の美しさが出てくる、『真実の音楽』が聴けたような気がします」と満足そうだ。
続いて同じ曲を、L-590Aにつなぎ変えて鳴らしてみると、中嶋さんの表情がぱっと明るくなった。「面白いものですね。この曲ではL-590Aの方が魅力的に感じます。音に紗がかかっているようで、演奏全体をとてもきれいに聴かせてくれます。演奏の弱い部分もフォローしてくれるように。特にこの曲は、私の声もそうですが、刺々しい部分がたくさんあります。それを柔らかく包み込んで聴かせてくれました」。ムースさんも「先ほど『真実の音楽』という言い方をしましたが、ここまで美しさを突き詰めると、それも一つの表現の真実として納得できます」と、2組のアンプそれぞれの味わいの違いをしっかりと受け止めてくれたようだ。
(2)へ続く・・・
投稿者 luxman
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