著名なクラシックアーティストを試聴室にお迎えして、ご自分の新作ディスクを最新のラックスマン製品でお聴きいただこうという特別企画も早、第6回目。今回はカウンターテナー歌手の彌勒忠史さんです。
彌勒さんは、ファルセット等を駆使して女声パートを唄うカウンターテナーの実力者で、このシリーズ初の男性アーティストということもあり、男性ならではのより具体的な試聴に対するご感想を交えながらの楽しい取材となりました。

ということで、今回も音楽之友社「レコード芸術」誌1月号に掲載されました内容を特別に2回に分けて掲載いたします。

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カウンターテナー歌手・彌勒忠史さんを迎えて
伝統あるデバイスによる最新の設計―真空管アンプで聴く古楽の妙
SQ-38u

■文:今泉晃一/写真:山本博道

カウンターテナー歌手として長くイタリアで活動し、帰国してからも古楽の分野を中心に歌手としてはもちろん、近年ではオペラの演出を手がけ、さらにはイタリアでの経験・研究を存分に生かした著書『イタリア貴族養成講座』を上梓するなどユニークな活躍を見せている彌勒忠史さん。今回はラックスマンの伝統ある真空管アンプSQ38シリーズの最新モデルである、SQ-38uを中心としたオーディオ・システムを聴いていただくことにした。プレーヤーもラックスマン最新のフラッグシップ・モデルであるCD/SACDプレーヤーD-08(¥997,500)を使用してディスクの持つ情報を余さず引き出し、「真空管アンプで鳴らす古楽」を存分に楽しんでいただいた。

最初に鳴らしたのは、ピアノ伴奏で彌勒さんのソロをライヴ収録した『イタリア古典歌曲をうたう』。音が出た瞬間、彌勒さんが「うわーっ」と声を上げた。1曲を聴き終えた感想は、「聴いていて心臓がばくばくしますよ。このCDは録音されてすでに世に出ているものなのに、臨場感がものすごいから『あそこの高音がちゃんとppで消えて行けるかな』とか、今さら心配になるくらい。それから、ブレスの音が聞こえるのはわかるのですが、自分が息を取ろうとして準備する体の動きまでがわかるんです。このアンプ、怖いですね(笑)。こんなものまでが録音されているなんて、今まで気が付きませんでした。音だけでなくて、そういう空気の揺らぎまで感じ取れるんですよ」といたく興奮気味。

「このディスクはライヴ録音ですが、例えば今かけた《オンブラ・マイ・フ》は、レチタティーヴォがあってから有名なアリアに入るので、お客さんが『次はあの有名なメロディだ』と身構えるざわっという空気があるんです。そういう雰囲気は舞台では感じるのですが、まさかCDに入っているとは思いませんでした」

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録音時のエピソードを交えながらの臨場感あふれるご感想をくれた彌勒さん

聴き慣れたCDから
発見と驚きを与えてくれた

次にイタリアのTACTUSレーベルから発売されている2枚を聴く。どちらも彌勒さんのカウンターテナーとチェンバロによる、ルネサンス~バロック期の歌曲だ。

「これも凄い。このチェンバロの音の立ち上がり方。撥弦楽器がここまでクリアに聞こえるかというくらい。このタクトゥス・レーベルでは、古楽の録音は編集を一切しません。このときも2回通して録っていい方を選ぶというだけです。もともと古楽というのは即興演奏が基本ですからね。だからこそ新鮮に録れているのかも知れませんが、例えば、僕の即興演奏をチェンバリストが自分の右手に反映させて、それを聴いた僕がまた違うことをやる。そういうスポットライトの奪い合いがクリアに聞こえてくるのがいいですね。こういう楽しみというのはジャズにも似ていて、このように演奏者がどこにいるのかはっきりわかるようなオーディオ・システムで聴くと、今音楽的なスポットライトが誰に当たっているのかがよくわかって一段と楽しいですよ」

最後に、彌勒さんの演出で2月に横須賀術劇場での上演が予定されている、パーセルの《ディドーとエネアス》のディスクをかける。

「こんな音だったんだ! このCDは演出のために最近毎日のように聴いているのですが、こうやって改めて聴くと、細部にまで神が宿っていると感じます! 例えばこの時代のバロック・ヴァイオリンなどはボウイングの最初の瞬間に“子音”があるのですが、それがはっきりと聞こえますし、コントラバスの胴の鳴りとかゴリゴリした感じがすごくいいですね。これを聴きながら仕事をしたら、ひょっとするとまた違う演出のアイディアが浮かんでくるかもしれませんよ」

さて、最後に、今日のテーマでもあった「真空管アンプで鳴らす古楽」について彌勒さんはこう話してくださった。

「真空管アンプというものは、現代における古楽と共通点が大きいと思います。真空管がアンプの世界では古くからあるものだとうかがいましたが、古楽も、500年前からあった音楽について学術的に『こうあらねばならない』という時代が終わって、その研究を踏まえつつ、人を楽しませるために古い音楽にどう命を与えるのかが大切になっています。このアンプも、聴き慣れたCDからいろいろな発見と驚きを与えてくれました」

真空管という歴史あるデバイスを使った最新設計。SQ-38uはまさに彌勒さんの歌う古楽と同じ視点に立つものであることがわかった。

後編へ続く・・・

投稿者 luxman | 取材ニュース | Twitterでつぶやく

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